啄木も愛した望郷のシンボル 岩手山
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 Published On Mar 19, 2022

東京から2時間10分。今年40周年を迎える東北新幹線で開業当時の終着駅、盛岡駅に降り立った。駅は北上川をはじめ大きな3本の川の合流地点に近く、いくつもの橋に囲まれている。数分歩いて橋の一つから北を望むと、冠雪した山が北上川を見下ろすようにどっしりと構えていた。
 直前まで天気予報とにらめっこをしていた私。限られた取材日程では、晴れそうなのはこの日だけとあってやや焦っていたが、無事に姿を見ることができてほっと胸をなで下ろした。
 岩手県の八幡平、滝沢両市などにまたがる岩手山は標高2038m。東北の背骨と呼ばれる奥羽山脈の中で最高峰だ。整った姿から南部富士とも呼ばれる。岩手や盛岡のシンボルとして住民に親しまれてきた。
 ︿ふるさとの 山に向ひて言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな﹀
 盛岡出身の歌人、石川啄木はこんな一首を残している。啄木は盛岡市北部の渋民地区で岩手山を見ながら幼い頃を過ごした。
 石川啄木記念館の学芸員、藤田麗さん(23)は「自然豊かな渋民で育った啄木は、新聞記者として各地で目にした山々に忘れられない故郷の山を重ねて見ていたのではないか」と話す。
 今も昔も岩手山の姿は変わらない。そして人々の山への思いもまた、啄木が詠んだ頃と変わらないのだろう。
 「仕事の帰り道に岩手山が見えると、心が落ち着きます」という藤田さん。ついつい足を止めてスマホで写真を撮ることも多いという。「後から確かめると同じような写真ばかりなんですが…」と笑顔で打ち明けてくれた。
 雪が解けると山頂の岩肌がワシの形になることから巌鷲山とも呼ばれている。岩手山が麓に春の訪れを知らせるのももうすぐだ。

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