Published On Mar 20, 2020
はじめに。
この春、全ての学校を卒業されたみなさん、ご卒業おめでとうございます。ご両親ならびに学校関係者の皆様におかれましても、心よりお祝い申し上げます。
しかし、今年は特別な卒業式になりました。送ってくれる在校生の姿はなく、ご両親が出席できた所は良い方で、自分の名前を呼ばれても返事もできず無言で立ち上がるだけ、その日のために練習を重ねてきた合唱曲も歌えなかったという声も多く聞いています。大学では中止になったり代表者だけが出席しYoutubeでみんなが見るという前代未聞の形になった所もあります。
卒業生はもちろん、在校生にとっても家族にとっても先生方にとっても大変悔しい思いをされたと思います。
かと言って誰かを責められるわけでもなく、やり場のないくやしさを多くの方が抱えている事は想像に難くありません。
そういった気持ちを抱えた卒業生にもこの悔しさを乗り越えて新しい春を迎えて欲しい。
そういう思いでショートフィルム「群青」を作りました。
卒業式の定番になりつつある「群青」という曲があります。
私は3年前に、家族の小学校の卒業式で初めて聞きました。
知らない曲でしたが、素朴で素直で大変感動したのを今でも覚えています。
これは東日本大震災で被災した福島県のある中学校の先生が、全国に散り散りになった生徒達の言葉を少しずつ紡いで作った曲だと聞いています。離ればなれになったけど同じ空の下つながっているね、と友人との絆を歌っています。
もし、時間があればまず合唱曲「群青」をお聞き下さい。
本当に素晴らしい曲です。
私は今回の新型コロナウィルスに関しては半分以上が「人災」だと感じています。一人一人が気をつけ、他者を慮り、普通に暮らしていれば拡散も日用品が不足する事もなく、このような事態になる事はなかったのではないでしょうか。もしそうだとするなら、卒業生達がなぜそんないわれのない悔しさを抱えなければならないのでしょうか。
私たちは国の存亡にかかわる未曾有の危機を手を取り合って乗り越えてきました。絶望しかなかった多くの災害から皆で力を合わせ見事に復興してきました。
先行きの不透明さに毎日不安を抱えていますが、手をとりあえば今回も必ず乗り越えられると信じています。
なので今回は卒業生たちの思いと、絆、この苦難をのりこえようというメッセージを、合唱曲「群青」に敬意を払い映像を制作しました。
主演をつとめる女の子は実際にこの三月、高校を卒業し答辞を読んだ子です。役者ではありませんが、素の自分で演じてくれました。
映像中に登場する答辞では最後半部分に震災で被災した東北のある中学校の卒業式で読まれたものを引用しています。
理不尽な悔しさを抱えながら、それでも前を向こうとする姿は今回の事につながると感じています。これ以上の文言を私には思い浮かびませんでした。中盤では新型コロナウィルスについて触れています。センシティブな問題ではありますが、後で振り返った時に2020年という年を思い出す最たる記憶として敢えて使用しました。
全ての卒業生に、この悔しさを乗り越えて笑顔で新しい青い春を迎えて欲しいと心から願います。
長くなりましたが、校長先生役をつとめてくれた方が私の台本を見て意図をくみ取りつつ、ご自分の言葉で式辞を述べてくださいました。私も全く同じ気持ちです。
賛否あると思います。
出演者や協力者は私からお願いしたり、気持ちに賛同してくれているだけなので、彼らや彼女らにはなんの責任もありません。もし賞賛があれば送ってあげて下さい。ただし、一切の批判は私が受け止めます。
令和最初の全ての卒業生とその関係者に捧げます。「群青」